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ミルとマーチャント

40年程前まで、日本に輸入される服地はマーチャント物が主流でした。マーチャントとは服地卸商を意味し、実際に服地を織る製造業者から服地を反(ピース)単位で仕入れ、服の仕立てを行うテーラーなどに必要な長さだけ切り売りをする業者です。

こうした業務で世界的な成功を収めたのが、フランスのDormeuil(ドーメル)、ベルギーのScabal(スキャバル)、イギリスのHolland & Sherry(ホーランド・シェリー)などのマーチャント。

これらの海外マーチャントはほとんどの場合製造業者を明かさず、それぞれのマーチャント名で服地は供給されるため一般的にマーチャント物と呼ばれます。

その後日本の経済の発展と共に服地の需要が増大するにつれ、日本のマーチャントが海外の服地製造業者から直接服地を仕入れ、日本のテーラーに供給することが多くなっていきます。

ここで初めて、服地製造業者の名前が一般に知られるようになっていくのですが、その頃は輸入服地といえばイギリス製が主流でした。

古くからイギリスの製造業者はMill(ミル)と呼ばれる「工場」を意味する大きな建物で製造を行っていたため、会社名と共に建物名から「? Mill」といった別名のような呼び名を持っています。

例えば「Edwin Woodhouse(エドウィン・ウッドハウス)」は「Sunny Bank Mills」、

「Taylor & Lodge(テイラー・ロッジ)」は「Rashcliffe Mills」、「Scofield & Smith(スコフィールド・スミス)」は「Clough Road Mills」といった具合です。


海外のマーチャントを通さず、ミルから直接日本に輸入された服地はミル物と呼ばれ、Taylor & LodgeやLearoyd(リーロイド)、Broadhead(ブロードヘッド)などが特に人気があったようです。

その後80年代に入るころから、流行の移り変わりと共にイタリア製の服地の評価が高くなっていきます。イタリアの製造業者にはイギリスの「○○ Mill」のような別名はありませんが、服地メーカーの名前で販売されるものはイギリス製にならって同じくミル物と呼ばれています。

イタリア語で毛織物製造業を意味する「Lanificio」が英語では「Woollen Mill / Worsted Mill」などと訳されるように、ミルといえば製造業者という認識はイタリアでも共通です。

現在では、元々はミルでありながらマーチャント業務も行っていたり、マーチャントでありながら傘下にミルを持っていたりと厳密な区別が付けづらい状況となっていますが、ミル、マーチャントどちらも、自社のブランド力を上げるべく様々なプロモーションを行って、精力的に服地の開発・販売を行っています。

今、日本には世界中のどこよりも様々な服地が輸入されており、バラエティに富んだそれぞれのコレクションから仕立てに用いる服地を選ぶことができるのです。